新刊 2017年1月
『机の上の植物園』
(ぼくの自然観察記)おくやまひさし著 少年写真新聞社
『机の上の植物園』というネーミングがいい。机というごく日常の室内イメージ
と「植物園」とを結びつけていろいろと身近な植物を観察している。著者は「漫画
家馬場のぼる氏に師事の後、独学で写真撮影を学び、読み物、画集、写真集を発表。
また、観察会などで子どもたちに自然の楽しみ方を指導している」と経歴にある。
この本を見ていると数々の挿絵の中に挿入されている写真が的確で,絵と写真がう
まくつながっている。
内容的には,題名からイメージできるようなごくありふれた植物が取り上げられ
ている。まずは,ジャガイモとタマネギ。これらは台所では植えていないのに芽が
出てくる光景をよく見かける。ふつうは捨てられる野菜だけれど,それが「机の上
の植物園」のきっかけになっている。「芽が出たジャガイモはどんな育ち方をするの
だろうか」と話が展開していく。植えてないのに、どんどん芽がでてくるから不思
議だと疑問をふくらませる。もう一つ,タマネギもよく台所でそのような場面に出
くわす。この本は「土入りの小さなプランターに植えたジャガイモと,ただ紙の上
に放置したジャガイモの成長の様子を観察している。その成長の違いがおもしろい。
また,芽が出たジャガイモをそのまま段ボール箱に入れて放置していたジャガイモ
の写真もありその成長ぶりはなかなか興味深い。同じようにタマネギもプランター
入りと机上置きとその成長ぶりを見る。同じように大豆の観察もしている。
こんどは,家の周りや野原で集めておいた雑草の種をプランターに植えている。
日当たり,日陰の影響もおもしろい。つる性の植物が芽を出すとさあ大変。つるが
鉛筆にもからんでくる。成長にあわての右往左往も楽しそう。友達からもらったと
いうエジブト時代の種の発芽も試みている。最後に樹木になる種の発芽も試みてい
るがこれはちょっとマニアックか。発芽や植物の生長についていろいろ試している
のが楽しそうだ。 2016,06刊 1800円
『もしも地球がひとつのリンゴだったら』
デビット・J・スミス文 千葉茂樹訳 小峰書店
天文や宇宙の話,地球の話などは,大人であればある程度予想することができる。
しかし,子どもはなかなかそうはいかないのが,この分野の指導の難しいところ
である。そこのところをこの本の著者はスケールを使ってうまく絵本にしている。
初めのページに「もしも…」とタイトルにあって
「地球の大きさってどれぐらい? 太陽系は? 銀河系は?/地球は何歳で、最初
の動物や人が地球にあらわれたのはいつ?/大きすぎたり、古すぎたりで、よくわ
からないことってあるよね。/でも、想像するのもむずかしいそんな「大きな」も
のを、目に見えて、手でさわれるものとくらべてみたらどうだろう。きっと、まわ
りの世界がこれまでとはちがって見えるはず。それが、この本のねらいだ。大きな
もの、広いスペース、長い時間を、わかりやすいサイズにちぢめてみるんだ。」
と呼びかけている。
・もしも太陽系の惑星をボールの大きさに縮めたら……
・もしも45億年の地球の歴史を1年間にちぢめたら……
・もしも人類の発明の歴史を1mの巻き尺にならべたとしたら……
・もしも過去1000年の発明を定規の上にならべたら……
として,それぞれ見開き大胆な挿絵で描かれている。後半になるとこんなテーマもある。
・もしも世界中のエネルギー資源を、100個の電球であらわしたら……
・もしも現在70億人をこえる世界中の人口を、村民100人の村だとすると ……
著者はスケールの大切さを説く。縮尺や拡大によってさまざまな事柄が正しくイメー
ジできることを語りかけている。
2016年7月 1,500円